田舎への誘いと田舎暮らしの心がまえに付いて
最近、とくに「田舎暮らし」にあこがれる人が増えてきたように思いますが、実際は、どうなっているのでしょうか。
以前、私に相談を頂き、いま、徳島で田舎暮らしを始めている方との対談の結果を書き記したいと思います。
田舎暮らしを始めるにあたって、知っておいて頂きたいことは、田舎での生活にも功罪があるということです。都会の便利な生活。物質文明の高度に発展した現代社会で、ボタンひとつで外から自宅のエアコンのスイッチを入れることができ、コンビニに行けば24時間、食べたいものが買える。そして、会社い行けば、毎日、競争に明け暮れ、同僚にだけは負けたくないとの想いで、残業に残業を重ねて優秀な成績を挙げ、意気盛んな時もありました。会社の製造ラインでは、一分一秒を争って効率的な生産ノルマをこなしていたのですが、ある日突然、ストレスから病気で休まざるをえなくなりました。それが、自分の人生を見つめ直すキッカケになったのです。
ぎっくり腰の激痛で、息も絶え絶えの状態で、床に伏せながら、ぼんやりと見たテレビの番組。元企業戦士がスピンオフして田舎暮らしを実現して、悠々自適の癒し生活を楽しんでいる内容の番組でした。それが、私の田舎暮らしを始めるキッカケとなりました。
実際、私のところにも「田舎暮らしに」に関した相談が多いので、特に東日本の大震災以後は、ものすごく「田舎暮らし」を望む人が多くなっているようです。確かに毎日ラッシュ、車、コンクリート、人に囲まれ、競争社会の中で、震災を原因とする原発事故が起き、一夜にして平穏な生活が奪われたことで、経済優先の生活に疑問符が生じたということも言えるのではないかと思います。
いま、真剣に、ほんとうの幸せとは何かについて考え始めた人が多いと感じます。
便利さに慣れ、文明の利器を享受していた生活が、今回の東日本大震災で一変。絶対に安全だと教えこまれ、洗脳されてきた原発が、安心、安全の施設でないことがはっきりしました。そんな、経済優先の生活に見切りを付け、少々、不便でも、ノンビリと、競争のない、自然のリズムに沿った生活をしたい、そんな想いの人がものすごく増えてきたのです。
社会が発展すればするほど、文明が発展すればするほど、その実現に競争意識が強くなり、その反動として、昔の童謡や小学校唱歌にあるような、自然の山や小川の中での生活に憧れるのだと思います。逆に私のように、毎日、自然に囲まれた生活をしていると、都会文化の中での生活もたまにはいいかなあと思ったりしますが。
でも、それは、1週間とか2週間くらいの短期間の生活です。実際に定住してしまうと疑問ですね。でも、田舎も都会もいいことばかりではありません。人生観と同じで、何事も前向きに対応できるかどうかです。「郷に入れば郷に従え」の気持ちが大切です。都会の論理を田舎に押し付ける人は、確実に村八分になります。
そして、「田舎」といっても、「のんびり」ばかりではありません。地域の仕事がた~くさんあります。少し若ければ「消防団」なるものに半強制的に入らなければいけません。地域の体協や地域の○○スポーツクラブや女性であれば婦人会などの誘いもたくさんあるでしょう。冠婚葬祭などは、日常茶飯事の恒例行事です。田舎の神社では氏子となって神社を守る義務も発生します。当然、お金も多少なりとも必要です。
また、地域、地区では、主人の年齢順などで、村の役員などの係もまわってくるでしょう。年間に一、二回は水路の掃除や、田んぼのあぜ道の草刈り等々の役目もまわってくるでしょう。そして、これらすべての行事の後には、必ず、打ち上げと称する「酒のみ会」なるものがついてまわります。その付き合いは半端なもんではありません。これが、村の団結力にもなるのですが、都会のマンション暮らしの人には負担なようです。
恒例の酒宴では、地域の話題もありますので、「酒の会」がどんどん進みます。私も、かつて消防団の会計事務を担当していたときは、記録をとっていましたが、なんと驚くなかれ、一年間で120日も飲み会をした計算でした。
結局のところ、「自然の中で、のんびり暮らしたい・・・」というだけで「田舎暮らし」に憧れている人は、後になって後悔しても知りませんよってことになるかも。ほんとうにに「田舎暮らし」を希望するということは「周辺に住む人との人付き合いが本当に好きな」人。そして「人と酒を飲み交わすのが本当に好きな」人ということを忘れないことが重要になってくるでしょう。
「自然のリズムに沿った生活が好き=その自然の中でくらす人たちも好き」という自覚をもった上で「田舎暮らしブーム」を語ってほしいと思っています。
なぜなら、せっかく、夢にまで見た田舎暮らしを始められたのに、現実は、「田舎暮らしなんかしなければ良かった・・・都会の生活より人間関係が複雑で騒々しい。それなら、まだ、車の騒音のほうがまだましだ!」と後悔してほしくない、失敗してほしくないからです。それと、田舎での日常は、仕事のつきあいからくる酒の付き合いばかりでなく、地域の冠婚葬祭をはじめとして、ありとあらゆる事に酒の付き合いがあり、それを断ってばかりいては田舎生活は成り立たないのです。
そうは言っても、昔ほど田舎でもお酒は飲まなくなったし、一次産業の衰退もあって若者が少なくなり、時代の流れで、地域の密着度も薄くなってきたように思います。そのため、それほど「近隣の人間関係」をあまり気にすることなく田舎暮らしを始められる時代になってきたことも確かではあります。
結論としては、現に、田舎暮らしを満喫している私が断言するのですが、都会の生活にはない煩わしい生活風習があるもののそれでも、「田舎暮らし素晴らしい」と太鼓判を押して表明したいと思います。
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